草食系院生ブログ

「労働」について思想史や現代社会論などの観点からいろいろ考えています。日々本を読んで考えたことのメモ。

2013-02-01から1ヶ月間の記事一覧

「脱成長」は可能なのか?-「成長の限界」と幸福度調査

前回まで「フリー」や「シェア」によって進められる脱所有・脱消費・脱貨幣の流れは、新しい経済-社会の可能性を開くと同時に、既存の経済市場の規模を縮小させてしまうかもしれない、という話をしてきました。これは言い換えれば、資本主義経済の規模が縮…

「脱お金」はわれわれの経済を「豊か」にするか?

前回まで、「フリー」や「シェア」の流行が脱所有・脱消費・脱貨幣に繋がっていくのではないか、というやや希望観測的な記事を書いてきました。こういった主張は、近年のネット論壇では珍しいものでは決してなく、むしろありふれていると言ってもいいくらい…

なにが「シェア」への欲望をもたらしているのか?-脱所有・脱消費・脱貨幣にむけて

前回は「フリー経済」について書いたので、今回は「シェア経済」について書きます。「シェア」はネット業界に限らず、ここ数年の流行キーワードのひとつです。シェアハウス、カーシェアリング、ワークシェアリングなど。facebookにも「イイネ!」機能ととも…

「フリー経済」は資本主義社会をどのように変えるか?

以前の記事で、雇用が収縮する低成長社会においては、非-資本主義的領域を拡張していくことが重要になるのではないか、と書きました。では具体的には、非-資本主義的領域とはどのような領域なのでしょうか? 現代社会における非資本主義的領域を考える際に…

ハイパー・メリトクラシー社会における「宿命的なもの」

前回記事の最後に「ポスト工業社会において必然的に生じてくる格差(労働の二極化)は、努力によってはどうしようも変えようのない「宿命的なもの」に思えてきてしまうことすらある」と書きました。このことを、若者の雇用問題に詳しい教育社会学者の本田由…

ポスト工業社会における「労働」のゆくえ

(だんだん思想史的な記事を書くのに飽きてきたので、突然ですが現代の労働について書きます。) ポスト工業社会では労働が二極化しやすい、という話をあえて戯画化したイメージで語ってみると次のようになるでしょう。 工業社会ではベルトコンベアの前での…

マルクスの唯物論はヘーゲルの労働観をどのように批判したのか -マルクス『経済学・哲学草稿』より

前回までヘーゲルの労働観について書きました。 ここでぐるっと一周してマルクスの労働観に戻ってくるのですが、若き日のマルクスはヘーゲルの思想を批判することによって自身の労働観を形成していきました。『経済学・哲学草稿』のなかでマルクスは次のよう…

「労働」と「承認」の弁証法 -ヘーゲル『精神現象学』より

前回はヘーゲルの『法の哲学』における、Bildung(陶冶=教養)の営みとして労働を位置づけるというヘーゲルの労働観について書きました。今回はヘーゲルの不朽の名著『精神現象学』における、「承認」獲得のための営みとしての労働について書いてみます。 …