2012-01-01から1年間の記事一覧
前回からの続きです。 前回は、17世紀以降に登場した統治=ポリスが初期資本主義(商工業)と同時並行的に発展し、それ自体が市場システムの一部をなすようになったこと、またその統治=ポリスの発展が労働力商品の集合としての「人口」を統治対象とするもの…
前回からの続き。 スミス-フーコーによれば、17世紀以降に出現した「統治としてのポリス」は、発展しつつある商工業(資本の増殖運動)をスムーズに機能させるための諸機能であり、具体的には都市の公衆衛生を高め、犯罪率を減らし、都市間の流通経路を確保…
アダム・スミスは『法学講義』のなかで、ポリスpolis(内政・生活行政)の役割について論じている。スミスによれば、ポリスはもともとギリシア語の「ポリテイア」から出たものであり、それが本来意味していたのは「国内統治の政策(the policey of civil gov…
前回の記事で書いた、アダム・スミスの労働価値説について、フーコーが『言葉と物』のなかで興味深い指摘をしている。よく知られているように、フーコーは『言葉と物』のなかでルネッサンス以降の西洋の知の枠組み(エピステーメー)の変遷を描いてみせた。…
今回は、経済学の父、アダム・スミスの労働観についてです。 アダム・スミス(1723-1790) アダム・スミスの『国富論』が、ピン工場の分業の例から始められていることは有名です。一人の職人がピンを最初から最後まで製造するよりも、複数の労働者で作業を分…
今回取り上げるのはヒュームの労働思想です。ヒュームは18世紀イギリスで活躍した思想家であり、アダム・スミスに並ぶスコットランド啓蒙の代表的思想家とされています。ここではヒューム研究の第一人者である坂本達哉さんの『ヒュームの文明社会』および『…
ここで山川出版社の『詳説 世界史研究』や小室直樹『日本人のための憲法原論』を参照しつつ、16世紀から17世紀にかけてのイギリス史を確認しておきたい。イギリスの思想家を中心とする労働思想の発達を確認するうえで、イギリスの歴史を押さえておくことがそ…
前回からの続き。 完訳 統治二論 (岩波文庫)作者: ジョン・ロック,加藤節出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2010/11/17メディア: 文庫購入: 10人 クリック: 94回この商品を含むブログ (75件) を見る ロックは労働によって所有権を基礎づける労働所有権論を提…
16~17世紀のイングランドを中心に、勤労規範が形成され、貧民・浮浪者が「労働者」へと仕立てあげられていく過程をみてきました。このような時代背景を背に、労働という行為を積極的に評価する思想が登場してきます。そのひとりが、『統治二論』において自…
前々回の記事で、16世紀のイングランドにおいて救貧対策が開始されたことについて書きました。復習しておくと、ヘンリ8世の時代(位1509-1547年)に、貧民を病気等のために働けない者と怠惰ゆえに働かない者に分類し、前者には物乞いの許可をくだし、後者に…
前回の続き。資本の本源的蓄積の結果、16世紀イングランドにて都市に増加した貧民・浮浪者への対策として、彼らを労働能力がある者とない者とに分け、後者には最低限の生活保障を与え、前者には強制的に労働を義務づける施策が行われました。ここに「働かざ…
前回までの記事で、マルクスの「本源的蓄積」(原始的蓄積)の議論を用いて、労働力という特殊な商品が国家の論理によって暴力的な過程を経て産みだされてきたことを見てきました。これが典型的に起こった16世紀イングランドの「囲い込み運動」の結果、土地…
前回の記事では、資本主義の発動条件として「生産者と生産手段との歴史的分離過程」、すなわち「資本の本源的蓄積」が必要とされたことを書きました。この歴史的分離過程は、典型的には16世紀からイギリスで行われた「囲い込み運動」のうちに確認することが…
前回、労働力という商品は元から市場に存在してるものではなく、歴史的過程のなかで人為的・暴力的に生みだされてきたものである、と書きました。労働者が賃金と引きかえに労働力を提供するという交換の形式が普遍化している事態は歴史的に特殊で珍しいもの…
前回の記事で、G-W-G' という資本の価値増殖を可能にさせるのが「労働力」という特殊な商品であることを書きました。ところでこの「労働力商品」は、自然にもとから存在していたものではありません。それは人為的・強制的に創りだされなければならなかった…
前回の続きです。前回は、マルクスの『資本論』を用いて資本の本質が「価値の無限増殖運動」にあること、資本の一般定式がG-W-G' で示されること、を説明しました。 ところで、このG-W-G' という資本の一般定式はあくまで等価交換に基いて実現され…
これまでの記事のなかで何度か「非-資本主義的経済圏」を創出・再興することが必要だと書いてきました。「非-資本主義的経済圏」とは具体的にはどのようなものなのか?今回はそれを考えてみます。 非-資本主義的な経済圏がどのようなものであるかを考える…
僕たちは「雇用収縮の時代」を生きています。いま先進国が共通して抱えている問題は「国内雇用の不足」です。たとえ景気が回復しても、なかなか雇用が回復しない。失業率が高止まりを続け、とくに若年世代がそのネガティブな影響を強く受けることになります。…
ヒト・モノ・カネが一体化して国境を超える21世紀型グローバリゼーション(ハイパーグローバリゼーション)が進むと、先進諸国内の雇用は縮小・流出し、慢性的な雇用不足に陥ることになります。さらに商品・サービスのコモディティ化が進み、海外から安価な…
前回までの記事で、21世紀型グローバリゼーションが進むと先進国内の雇用が縮小・流出するだけでなく、商品・サービスのコモディティ化が進みやすくなると書きました。その結果として、先進国の労働者は世界中の新興国・途上国に住む労働者たちと潜在的に競…
前回の続きです。前回の記事は、21世紀型グローバリゼーション(モノだけでなく、ヒト・モノ・カネすべてがグローバル化する現象)によってオフショアリング(海外アウトソーシング)が進み、先進諸国内の雇用が流出・縮小していく状況にある、というお話で…
昨日の記事の続き。先進諸国が慢性的な国内雇用不足に陥っているのはなぜなのか?これをうまく説明してくれるのが経済学者・野口悠紀雄さんの『資本開国論』です。野口さんは「21世紀型グローバリゼーション」というキーワードを使いながら、先進諸国の国内…
僕が大学に入学したのはもう10年以上前ですが(月日の流れる早さは恐ろしい)、その頃はまだ「数年後には団塊世代の大量引退が始まる、すると少子高齢化が進む日本は労働力不足に陥るだろう、この労働力不足をどうやって解消するかが問題だ」という議論が真…
かつての偉大な経済学者たちは、将来経済が発展し、生産力が向上して生活が豊かになれば、労働時間は減少し、人びとは余暇を謳歌するようになるであろうと考えていました。スミスしかり、マルクスしかり、ケインズしかり。しかし彼らの生きた時代からみて驚…
数日前の記事で、「日本がこんなに物質的に豊かな国であるにもかかわらず、僕たちはどうしていまだにこんなに働いているのか?」という問いを出しました。僕の考えるところ、その答えはひとつです。それは「僕たちの社会があまりに資本主義にとらわれている…
僕が大学を就職して、某メーカー企業に就職したのが2005年だったのだけれど、ちょうどその頃から、正規社員と非正規社員の格差問題や、ワーキングプア問題、偽装請負事件、ロストジェネレーション問題などが世間を賑わすようになった。2006年には「格差社会…
僕は労働の思想史研究を専門にしていて、主に経済思想史や社会思想史と呼ばれる分野から「労働」のあり方についていろいろと考えている。「労働」は社会のなかでどのような機能を果たしているのか、労働観は時代や社会ごとにどのように変遷してきたのか、我…
どーも、草食系院生です。 最近はtwitterばっかりやってたんですが、久しぶりにブログ書きたいなーと思ったので、新しくブログ作ってみました。 日記がわりにダラダラ書いていこうかなと思っていますので、よろしくお願いします。